ESTA申請で自宅住所の次に手が止まるのが、勤務先(雇用主)の情報です。会社名を英語でどう書くのか、本社と自分の勤務地のどちらを入れるのか、そもそも自分は入力対象なのか——判断に迷う点が集中しています。この記事では勤務先欄だけを取り出し、欄ごとの記入例と、書かなくてよいケースの見分け方を整理します。自宅住所そのものの書き方はESTAの住所欄の書き方にまとめています。
勤務先はどこで聞かれるのか
ESTAの申請フォームは、パスポート情報・個人情報・渡航情報・適格性質問という順で進みます。勤務先の入力は個人情報のブロックにあり、まず「現在または過去に雇用主がいますか(Do you have a current or previous employer?)」という質問が出ます。
ここで「はい」を選んだときだけ、勤務先の名称・住所・電話番号・職種の入力欄が展開されます。「いいえ」を選べば入力欄そのものが出ません。つまり最初の分岐を正しく選べば、その後の入力は自宅住所と同じルールで機械的に埋められます。
なお申請フォームの表示言語を日本語にしていても、入力する中身はすべて半角の英数字である必要があります。全角文字が1つ混ざるだけで弾かれます。
会社名の英語表記の決め方
会社名は自分で訳すのではなく、すでに存在する英語表記を探して使うのが原則です。優先順位は次のとおりです。
- 1登記されている英語商号、または会社の英文サイト・英文会社案内で使われている表記
- 2英語名刺・英文の在職証明書に印刷されている表記
- 3どこにも無ければヘボン式ローマ字+法人格(例:株式会社ヤマダ商事 → Yamada Shoji Co., Ltd.)
法人格の英訳は Co., Ltd. / Inc. / K.K. / LLC などいくつもありますが、正解が1つに決まっているわけではありません。重要なのは、ビザ関連の他の書類(在職証明書、招へい状、航空券の会社名など)と同じ文字列に揃えることです。Co., Ltd. と Inc. が書類ごとに混在していると、照合で不利になります。
法人格ごとの英語表記の考え方は株式会社・合同会社を英語で書く方法で詳しく解説しています。
勤務先住所の振り分け(記入例)
住所の入力欄は自宅住所と同じ構成です。日本語の住所を逆順に分解して振り分けます。
日本語:東京都港区六本木3丁目12-5 森ビル8階
- Employer Name
- GlobalShips Co., Ltd.
- Job Title / Occupation
- Sales Manager
- Address Line 1
- 3-12-5 Roppongi
- Address Line 2
- 8F Mori Building
- City
- Minato-ku
- State/Province/Region
- Tokyo
- Country
- JAPAN
- Phone
- 81 3-1234-5678
フロア表記は「8F」で通じます。Address Line 1に建物名まで入れて長くなりすぎるなら、建物名とフロアをAddress Line 2に逃がしてください。この2つの欄の使い分けはAddress Line 1・Line 2とは?で整理しています。
本社と勤務地、どちらを書くか
支店や営業所で働いている場合、本社住所と自分の勤務地のどちらを入れるか迷います。判断の基準はシンプルで、**あなたが実際に勤務している事業所の住所**を書きます。ESTAが確認したいのは「この人がどこで何をしている人か」であって、法人の登記地ではありません。
ただし、在職証明書など他の書類で本社住所を使っている場合は、そちらに合わせたほうが照合で揺れません。どちらでも矛盾しないなら勤務地、書類がすでに存在するならその書類と同じ住所、と考えてください。
在宅勤務が中心で決まったオフィスがない場合は、所属する事業所(雇用契約書に書かれた勤務地)の住所を入れます。自宅住所を勤務先として入れるのは、自営業・フリーランスで自宅が事業所である場合に限られます。
職種(Job Title)の書き方
役職名は短く、一般的な英語で構いません。凝った社内呼称をそのまま訳す必要はありません。
- 会社員(総合職):Company Employee / Office Worker
- 営業:Sales Representative、営業課長なら Sales Manager
- エンジニア:Software Engineer / System Engineer
- 事務:Administrative Staff
- 経営者・役員:Company Executive / Director
- 自営業:Self-Employed
- 公務員:Public Servant / Government Employee
- 医師・看護師・教員:Physician / Nurse / Teacher
選択式のプルダウンになっている場合は、近い区分を選べば足ります。ここで細かく正確さを詰める必要はありませんが、明らかに実態と違う区分(無職なのに会社員を選ぶなど)は避けてください。
勤務先がない場合の選び方
雇用主がいない人は、無理に何かを書くのではなく該当しないことを示します。
- 学生:現在も過去も雇用されたことがなければ「いいえ」を選びます。アルバイト経験を書く義務はありませんが、書きたい場合はその勤務先を入れても差し支えありません
- 専業主婦(主夫):雇用主がいないので「いいえ」
- 定年退職者・離職中:**過去の雇用主を問う質問でもある**ため「はい」を選び、直近の勤務先を入れるのが自然です
- 自営業・フリーランス:屋号があれば屋号、なければ自分の氏名を事業者名として入れ、住所は事業所(自宅兼事務所なら自宅)を入れます
最も避けたいのは、勤務先がないのに自宅住所を勤務先欄に入れてしまうことです。自宅住所と勤務先住所が同一なのに自営業ではない、という不整合が残ります。
よくあるエラーと対処
- 1全角文字が混ざっている:会社名のハイフン、住所の数字、電話番号がすべて半角か確認します。日本語入力のまま打った全角ハイフンが最多の原因です。
- 2記号で弾かれる:会社名の「&」は「and」に、「(株)」は法人格の英語表記に置き換えます。ピリオドやカンマは通るのが一般的です。
- 3電話番号の桁が合わない:国番号欄が別にあるなら81を選び、市外局番の先頭の0を取ります(03-1234-5678 → 3-1234-5678)。詳しくは日本の電話番号の国際表記を参照してください。
- 4文字数超過:会社名が長い場合、法人格を Co., Ltd. のように略記で収めます。住所側は建物名をAddress Line 2へ移します。
- 5State欄に選択肢がない:日本を選ぶと都道府県が自由入力になる形式では、「Tokyo」のように県名だけを入れます。Prefectureは付けません。
ESTAの申請仕様や質問文は変更されることがあります。最終的な入力要件は、米国税関・国境警備局(CBP)の公式サイトで確認してください。
他の申請書と表記を揃えておく
勤務先の英語表記は、ESTAだけで完結しません。同じ会社名・住所を使う場面が続きます。
- 入国時に書く税関申告書や、渡航先での宿泊登録カード(海外ホテルのチェックイン用紙の書き方)
- 他国の電子渡航認証(カナダのeTA、韓国のK-ETA、インドのe-Visaなど)
- 海外出張の宿泊予約やレンタカーの法人予約
最初に「会社名・勤務先住所・会社の電話番号」を英語で1セット作ってメモに残しておくと、以後はコピーするだけで済みます。ビザ申請全般での勤務先の扱いはビザ申請の住所の書き方にもまとめています。
GlobalShipsで勤務先住所を英語に変換
GlobalShips(globalships.jp)は、郵便番号を入力するだけで都道府県・市区町村を自動補完し、英語表記の住所を生成する無料ツールです。番地・市区町村・都道府県・郵便番号が分かれた形で出力されるため、Address Line 1/City/State/ZIP の各欄にそのまま振り分けられます。自宅と勤務先の2件を先に作ってメモしておけば、ESTAの入力は一度で終わります。処理はすべてブラウザ内で完結し、住所や会社名がサーバーに送信されることはありません。
まとめ
ESTAの勤務先欄の要点は3つです。①会社名は自分で訳さず、既にある英語表記(登記名・英文サイト・英語名刺)を使い、他の書類と同じ文字列に揃える。②住所は実際に勤務している事業所を、自宅住所と同じく逆順・半角ローマ字で振り分ける。③雇用主がいなければ「いいえ」を選び、自宅住所を代わりに入れない。この3つを守れば、勤務先欄でつまずくことはありません。