ESTAの申請フォームには、氏名を入力したあとに「別の名前や別名を使ったことがありますか(Have you ever used other names or aliases?)」という質問があります。ここで手が止まる日本人が多いのは、結婚で姓が変わった人が「これは別名にあたるのか」を判断できないためです。結論から書くと、改姓は別名にあたります。この記事では、どんな場合に「はい」を選ぶのか、旧姓をどう分けて入力するのかを整理します。
この欄が聞いていること
この欄は、現在パスポートに記載されている名前以外に、これまで使ってきた名前があるかどうかを確認するためのものです。犯罪歴や不審な経歴を疑う欄ではありません。同一人物の記録を名前で照合するための情報収集です。
そのため、旧姓があること自体は何ら問題になりません。むしろ隠して「いいえ」にするほうが、他の書類(戸籍の英訳や過去の渡航記録)と食い違ったときに面倒になります。該当するなら素直に「はい」を選び、旧姓を書いてください。
入力そのものは難しくありません。姓と名を分けて、ローマ字で書くだけです。
結婚・離婚で姓が変わった場合(最も多いケース)
日本人が「はい」を選ぶ理由のほとんどがこれです。婚姻・離婚・養子縁組などで戸籍上の姓が変わっていれば、変わる前の姓は「以前使っていた名前」にあたります。
記入例: 現在の氏名:田中 花子(TANAKA HANAKO) 旧姓:佐藤(SATO) → Family Name: SATO / Given Name: HANAKO
名(Given Name)は変わっていなくても、旧姓とセットでフルネームとして入力します。姓だけを単独で書く欄ではありません。
何度か改姓している場合は、複数の別名を追加できます。結婚と離婚を経て旧姓に戻っているなら、婚姻中の姓を別名として入れてください。追加の行が用意されているので、思い当たるものは並べて問題ありません。
漢字は使えません。すべて半角のローマ字で入力します。
パスポートに旧姓が併記されている場合
日本のパスポートには、申請時に希望すると旧姓や別名をカッコ書きで併記できる運用があります。この併記がある人は、パスポートの顔写真ページに印字されているその綴りをそのまま使ってください。自分でローマ字を作り直す必要はありません。
パスポート側の綴りと申請フォームの綴りが違うと、名前が一致しない状態になります。旧姓の綴りに迷ったら、まずパスポートを見る。載っていなければ、次の項目のヘボン式のルールで作ります。
なお併記があること自体は、この欄で「はい」を選ぶ理由になります。パスポートに二つの名前が載っている=別の名前を使ったことがある、ということだからです。
旧姓以外で「別名」にあたるもの・あたらないもの
改姓以外にも別名として書くべきものがあります。判断の軸は「公的な記録や渡航の場面で使ったことがあるか」です。
あたるもの: ・帰化や国籍取得の前に使っていた名前 ・養子縁組で変わる前の姓 ・過去のパスポートに記載されていた綴り(ヘボン式の変更などで表記が変わった場合) ・戸籍上の名の変更(改名)をした場合の旧名
書かなくても実害が出にくいもの: ・職場だけで使っている旧姓の通称(戸籍も証明書類も現姓のまま) ・友人間のあだ名、SNSのハンドルネーム ・結婚後も仕事で旧姓を名乗っているだけの場合
迷ったら書いておくほうが無難です。多く書いたことで手続きが止まる要素はありません。逆に、書かなかった名前が別の書類に出てくると照合が必要になります。
芸名・ペンネームで公的な活動歴がある人は、書いておくほうが説明が楽になります。
ローマ字表記の作り方
旧姓のローマ字は、パスポートと同じヘボン式で作ります。ポイントは長音の扱いです。
- 長音は伸ばさずに書く:佐藤→SATO(SATOU・SATOHではない)、大野→ONO、伊東→ITO
- 「ん」はn:本田→HONDA。ただしb・m・pの前はm:南部→NAMBU(NANBUでも通ることがある)
- 小さい「っ」は次の子音を重ねる:服部→HATTORI
- 「し」はSHI、「ち」はCHI、「つ」はTSU:西村→NISHIMURA、千葉→CHIBA
大文字・小文字はどちらでも受け付けられることが多いですが、パスポートの記載にならって大文字で統一しておくと見比べやすくなります。
長音のHを入れる表記(OHNO、SATOHなど)は、パスポートでその綴りを選んでいる人だけが使ってください。パスポートがONOなら、この欄もONOです。氏名のローマ字化の全体ルールは日本人の氏名をローマ字で書く方法にまとめています。
迷ったときの判断の順序
次の順に確認すれば、ほぼ判断がつきます。
- 1パスポートに旧姓・別名の併記があるか → あれば「はい」、その綴りをそのまま入力
- 2戸籍上の姓や名が変わったことがあるか → あれば「はい」、変更前のフルネームを入力
- 3過去のパスポートの綴りが今と違うか → 違えば「はい」、旧綴りを入力
- 4どれにも当たらない → 「いいえ」で進む
通称やあだ名しか思い当たらないなら、無理に書かなくて構いません。ここは記録の照合用の欄であって、網羅性を試す欄ではありません。
他の欄で止まったときは
ESTAは氏名以外にも、日本人が手を止めやすい欄がいくつかあります。
- 住所欄(Address Line 1・2、State/Province)
- ESTAの住所欄の書き方
- 出生地(City of Birth)
- ESTAの出生地欄の書き方
- 国民ID番号(National Identification Number)
- ESTAの国民ID番号の書き方
- 両親の氏名
- ESTAの両親の氏名欄の書き方
- 勤務先・雇用主
- ESTAの勤務先・雇用主情報の書き方
- 米国内連絡先(Point of Contact)
- ESTAの米国内連絡先の書き方
旧姓で発行された証明書を提出する場面がある人は、戸籍謄本の英訳が必要になることがあります。手順は戸籍謄本を英訳する方法で解説しています。
GlobalShipsで住所を英語に変換
GlobalShips(globalships.jp)は、郵便番号を入力するだけで日本の住所を英語表記に変換できる無料ツールです。ESTAの Address Line 1 / Address Line 2 / City / State / Postal Code に分かれた形で出るので、そのままコピーできます。変換はブラウザ内で完結し、入力内容が外部に送信されることはありません。
まとめ
結婚や離婚で姓が変わったことがあるなら「はい」を選び、旧姓を Family Name と Given Name に分けて入力します。パスポートに旧姓が併記されていればその綴りを、なければヘボン式で長音を伸ばさずに書きます。旧姓を書いたことで審査が厳しくなることはありません。迷ったら書いておくほうが、後の照合が楽になります。制度上の要否や最新の入力仕様は、申請前に公式サイトで確認してください。