海外発送の送り状、航空券の予約、海外サイトのアカウント登録など、氏名をローマ字で書く場面は多くあります。「つ」はTSUかTUか、「伊藤」はITOかITOUかなど、迷いやすい点がいくつかあります。この記事では判断の基準と、実際に使われる表記ルールを整理します。
最優先はパスポートの表記に合わせること
ローマ字表記に絶対の正解はありませんが、実務上の基準ははっきりしています。**パスポートに書かれている綴りに合わせる**ことです。
理由は照合されるからです。航空券の氏名がパスポートと違うと搭乗を断られることがあり、有償での訂正が必要になります。クレジットカードの名義も、決済時に券面の綴りとの一致を求められます。海外の宿泊予約やビザ申請も同様です。
したがって、以下のルールは「パスポートを持っていない」「これから作る」場合の指針として読んでください。すでにパスポートがあるなら、そこに書かれている綴りが答えです。
ヘボン式ローマ字の基本
パスポートは外務省が定めるヘボン式が基準です。訓令式と紛らわしい行を挙げます。
し → SHI(SIではない) ち → CHI(TIではない) つ → TSU(TUではない) ふ → FU(HUではない) じ → JI(ZIではない) しゃ・しゅ・しょ → SHA・SHU・SHO ちゃ・ちゅ・ちょ → CHA・CHU・CHO じゃ・じゅ・じょ → JA・JU・JO を → O
例:しんいち(真一)→ SHIN'ICHI、ちひろ(千尋)→ CHIHIRO、つよし(剛)→ TSUYOSHI。
「ん」の書き方(B・M・Pの前はM)
ヘボン式では、「ん」の直後に B・M・P が続く場合、Nではなく**M**と表記します。ここは間違えやすい箇所です。
南部(なんぶ)→ NAMBU 本間(ほんま)→ HOMMA 三瓶(さんぺい)→ SAMPEI 群馬(ぐんま)→ GUMMA 難波(なんば)→ NAMBA
それ以外の位置では N を使います(例:本田 HONDA、神田 KANDA)。
また、「ん」の次に母音またはYが続くときは、切れ目を示すためにアポストロフィを入れて N' と書きます。例:真一(しんいち)→ SHIN'ICHI、順也(じゅんや)→ JUN'YA。これを入れないと SHINICHI となり「し・に・ち」とも読めてしまうためです。
なお、パスポートでは申請時に非ヘボン式(NANBU など)の表記が認められる場合があります。すでに発行済みなら券面の綴りに従ってください。
長音(伸ばす音)は表記しない
ヘボン式では長音を表記しません。日本人が最も迷うのがここです。
伊藤(いとう)→ ITO(ITOU・ITOH ではない) 大野(おおの)→ ONO(OHNO ではない) 佐藤(さとう)→ SATO 雄一郎(ゆういちろう)→ YUICHIRO
つまり「井藤(いとう)」も「伊藤(いとう)」も、ローマ字ではどちらも ITO になります。読みが同じなら綴りも同じです。
ただしパスポートでは、長音に H を加えた表記(ITOH、OHNO など)を申請により選べます。この表記のパスポートを持っている人は、航空券やカードもそちらに合わせてください。
促音(っ)は子音を重ねる
小さい「っ」は、次に来る子音を重ねて表します。
一平(いっぺい)→ IPPEI 服部(はっとり)→ HATTORI 別府(べっぷ)→ BEPPU
例外があります。次が CH で始まる音のときは、C を重ねず **T** を足します。
八丁(はっちょう)→ HATCHO(HACCHO ではない) 抹茶(まっちゃ)→ MATCHA
氏名の順序と大文字
日本語では「山田太郎」と姓→名の順ですが、英語では「Taro Yamada」と名→姓が一般的です。どちらで書くかはフォームの欄名で判断します。
Family Name / Last Name / Surname → 姓(YAMADA) Given Name / First Name → 名(TARO)
欄が分かれていれば順序で迷うことはありません。1つの欄にまとめて書く場合は、パスポートと同じ「YAMADA TARO」(姓→名・大文字)にしておくのが安全です。配送業者の送り状も大文字表記が読み取りやすく推奨されます。
ミドルネームの欄は、日本人であれば空欄で構いません。欄名の意味はGiven Name・Surname・Middle Nameとは?で詳しく解説しています。
難読の姓は読みから変換する
ローマ字は漢字ではなく「読み」を写すものなので、難読姓でも読みが分かれば機械的に変換できます。
物部(もののべ)→ MONONOBE 小鳥遊(たかなし)→ TAKANASHI 四月一日(わたぬき)→ WATANUKI 東海林(しょうじ)→ SHOJI
読み方が複数ある姓(例:東海林=しょうじ/とうかいりん)は、本人の読みに従います。ここでもパスポートの綴りが最終的な基準になります。
GlobalShipsでのローマ字変換
GlobalShips(globalships.jp)は、氏名のカタカナ読みを入力するだけでヘボン式ローマ字に変換します。促音・撥音・長音の処理も自動で行うため、TSU/TU や ん→M/N の判断で迷う必要がありません。住所の英語変換と同じ画面で完結し、入力内容はブラウザ内でのみ処理されます。
旧姓をローマ字で書く場面としては、ESTAの別名欄が代表的です。書き方はESTAの別名・旧姓(Other Names Used)欄の書き方で解説しています。
まとめ
パスポートを持っているなら、その綴りに合わせるのが唯一の正解です。持っていない場合はヘボン式に従い、長音は表記せず(伊藤=ITO)、B・M・Pの前の「ん」はM(本間=HOMMA)、促音は子音を重ねる(一平=IPPEI)と覚えてください。住所側の書き方は日本の住所を英語で書く方法にまとめています。
税務書類W-8BENでも氏名と住所のローマ字表記が必要です。書き方はW-8BENの住所の書き方にまとめています。
申請書で両親の氏名をローマ字にする場面についてはESTAの両親の氏名欄の書き方で具体的な記入例を挙げています。
予約の氏名欄(First name / Last name)をパスポートの綴りに揃える手順は海外ホテル予約の氏名の入力で解説しています。
住民票や戸籍を英訳するときは、氏名と一緒に続柄の表記も決めることになります。住民票の続柄の英訳一覧を参照してください。