海外へ荷物を送るとき、住所の書き方より先に詰まるのが「これは送れるのか」です。窓口で断られる、通関で止められる、届いた先で没収される。どれも起きます。厄介なのは、送れない理由が1つではないことです。飛行機に載せられないから送れないもの、相手の国が輸入を認めていないから送れないもの、そもそも法律で禁じられているもの。理由が違えば、代わりの手段があるかどうかも変わります。この記事では3つの理由に分けて整理します。
① 航空危険物:業者を変えても送れない
旅客機や貨物機に載せられない品物です。国際郵便でも、FedEx・DHL・UPSなどの国際宅配便でも、航空便で運ぶ以上は同じ制限がかかります。相手国の事情とは無関係で、業者を変えても解決しません。
代表的なものを挙げます。
モバイルバッテリー・リチウムイオン電池の単体:航空機に載せられません。機器に内蔵された電池(スマートフォン、カメラ、ノートパソコンなど)は、容量などの条件を満たせば送れる場合がありますが、宛先国によって条件が違い、国際郵便では受け付けない国もあります。予備電池だけを送るのはまず不可と考えてください。
スプレー缶・エアゾール製品:制汗スプレー、ヘアスプレー、殺虫剤、カセットコンロ用ガス。中身が空でも缶に圧力が残っているとみなされます。
ライター・マッチ・着火剤・花火・クラッカー。
香水・オーデコロン・マニキュア・除光液・接着剤・塗料:アルコールや有機溶剤を含み、引火性の液体に当たります。「化粧品だから大丈夫」とはなりません。
アルコール度数の高い酒類:度数によって扱いが変わり、非常に高いものは送れません。度数の低いものも、相手国が酒類の輸入を認めているかは別の問題です。
磁性の強い磁石、水銀を含む体温計・血圧計、消火器、酸素ボンベ。
この分類のものは、船便であれば送れることがあります。ただし船便でも危険物の制限はあり、無条件ではありません。日数も数週間から数か月かかります。
② 相手国の検疫・輸入規制:国ごとに違う
日本から出すことはできても、相手の国が受け入れないものです。ここが一番間違えやすく、しかも国によって答えが変わります。
食品:肉と乳製品はほとんどの国で止まります。ビーフジャーキー、レトルトのカレーやシチュー、肉入りのインスタントラーメン、チーズ、粉ミルク。「加工してあるから平気」ではありません。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、EUなどは検疫が厳しく、没収のうえ罰金の対象になることもあります。米・野菜・果物・ナッツ類も植物検疫の対象です。
種子・苗・土・植物:ほぼ全ての国が規制しています。土の付いた靴や園芸用品も対象になることがあります。
医薬品:日本の薬局で普通に買える薬でも、相手国では処方薬扱いだったり、成分そのものが持ち込み禁止だったりします。市販の風邪薬に含まれる成分が規制対象の国もあります。処方薬を送る場合は、処方箋の写しや英文の診断書を求められることがあります。
電子タバコ・加熱式たばこ:国によっては所持自体が違法です。タイやシンガポールが知られた例で、罰金や刑事罰の対象になります。本人が持ち込む場合も同じです。
たばこ・酒類:禁止されていなくても、少量でも課税されたり、数量制限があったりします。
中古品:衣類や電化製品の中古の輸入を制限している国があります。
無線機器・ドローン:電波法の関係で持ち込みや使用に許可が必要な国があります。
判断の順番はこうです。まず日本郵便が公開している国・地域別の条件で、その国宛に送れない物品を確認します。そのうえで、相手国の税関・検疫当局の情報を見ます。日本側で受け付けられても相手国で止まることがあるため、両方を見る必要があります。宛先の人に現地で確認してもらうのが最も確実です。
③ 法令で送れないもの
国際郵便・宅配便のどちらでも扱えず、送ろうとした行為自体が問題になるものです。
偽ブランド品・海賊版:意図的でなくても、知的財産権を侵害する品物は差し止めの対象です。フリマアプリで買ったものを転売のために海外へ送るとき、本物かどうかの確認は送る側の責任になります。
現金・小切手・有価証券:国際郵便では現金を送れません(一部に別枠の制度がありますが、通常の小包やEMSでは不可です)。国際宅配便も同様に扱いません。お金を送るなら送金サービスを使ってください。海外送金の受取人住所の書き方は海外送金の受取人住所の英語表記にまとめています。
麻薬・向精神薬、銃砲刀剣類、その部品・弾薬、火薬類。
わいせつ物。
ワシントン条約(CITES)の対象品:象牙、べっ甲、一部のワニ革・ヘビ革製品、一部の木材(ローズウッドなど)を使った楽器や家具。古い持ち物や中古の楽器で該当することがあります。
個人情報を含む書類やパスポート原本などは、法令上の禁制品ではありませんが、紛失時の損害が大きいので追跡と補償のあるサービスを選んでください。
郵便と国際宅配便で扱いが違うもの
同じ品物でも、国際郵便(EMS・国際小包)と国際宅配便(FedEx・DHL・UPS)で受付の可否が変わることがあります。
国際郵便は各国の郵便当局のルールに従うため、宛先国ごとの禁制品リストが細かく決まっています。一方、国際宅配便は自社のネットワークで運ぶため、危険物を専用の手続き(危険物輸送サービス)で扱える場合があります。ただし個人利用では受け付けないことが多く、料金も大きく変わります。
逆に、国際宅配便のほうが厳しいこともあります。食品や液体を個人の差出人からは受け付けない、といった運用です。
実務的には、微妙な品物は発送前に窓口かカスタマーサービスに品名を伝えて確認するのが早いです。サービスの選び方は国際配送サービスの比較を参照してください。
送れないと分かったときの代替手段
諦める前に、この順で検討してください。
1. 現地で買えるものに置き換える。化粧品、医薬品、電池類は、現地の通販サイトから相手の住所へ直送するほうが速くて安く済むことが多いです。日本にしかない品物でなければ、これが最善です。
2. 危険物に当たらない形の同等品を探す。スプレーではなくロールオンやクリーム、香水ではなく練り香水、といった置き換えです。液体を固形に変えるだけで送れるようになる品物はかなりあります。
3. 船便を使う。航空危険物のうち、船便なら送れるものがあります。日数と、それでも残る制限を確認してください。
4. 個数と量を減らす。数量制限で止まっているだけなら、少量に分ければ通ることがあります。ただし免税枠の回避を狙って荷物を分けるのは別の問題を招きます。関税の考え方は海外通販の関税・消費税はいくらかにまとめました。
5. 相手が持ち帰る。次に会うときに手荷物で渡す。機内持ち込みと預け入れの制限は郵便とは別のルールなので、郵便で送れないものが手荷物では持てる場合があります(モバイルバッテリーは代表例で、機内持ち込みなら条件付きで可能です)。
品名をごまかすと何が起きるか
税関告知書(内容品の申告)に実際と違う品名を書く、価格を低く書く、「Gift」と書いて実際は商品を送る。これらはやめてください。
見つかった場合、荷物は没収されます。補償もありません。EMSの補償は、そもそも禁制品や虚偽申告の荷物には適用されません。相手国では受取人が罰金や責任を問われることがあり、送った側だけの問題では終わりません。繰り返せば差出人として記録されます。
内容品は具体的に書きます。「Gift」「Sample」「Goods」のような曖昧な書き方は、それ自体が開封検査の理由になります。書き方は税関告知書(内容品の申告)の書き方とコマーシャルインボイスの住所・内容の書き方に例を並べています。
荷物が止まって動かなくなったときの追い方は海外に送った荷物が届かないときの対処を参照してください。
GlobalShipsで住所を英語に変換
GlobalShips(globalships.jp)は、郵便番号を入力するだけで日本の住所を英語表記に変換できる無料ツールです。EMS・FedEx・DHL・UPSの送り状にそのまま写せる形式で出力できます。送れる品物かどうかの確認が済んだら、差出人住所の英語表記はここで作れます。変換はブラウザ内で完結し、入力内容が外部に送信されることはありません。
まとめ
送れない理由は3つに分かれます。航空危険物(モバイルバッテリー、スプレー、香水など)は業者を変えても航空便では送れません。相手国の検疫・輸入規制(肉製品、種子、医薬品、電子タバコ)は国ごとに違うため、日本郵便の国別条件と相手国の情報の両方を確認します。法令で禁止されたもの(偽ブランド品、現金、ワシントン条約の対象品)はどのサービスでも扱えません。迷ったら発送前に窓口で品名を伝えて確認してください。品名をごまかすのは、没収と補償の喪失に直結します。規制は変わるため、発送のたびに最新の条件を確認することをおすすめします。